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世界へ発信 地域でつながる新たな医療の形

人口減少が加速する日本社会において、急務となっている課題のひとつが地域医療体制の再構築。多くの地域病院が、住民を支えていくための運営体制を模索しています。その中で、地域のつながりで お互いを支え合うコミュニティケアの実現を目指した「コミュニティ・ホスピタル」という新しい病院の形を創り上げているのが、静岡県掛川市に拠点を構える掛川東病院です。今回はその活動の一端をご紹介します。 医療法人社団 綾和会 掛川東病院 (静岡県掛川市)

世界へ発信
地域でつながる新たな医療の形

病院の役割は治療だけではない

2025年春にシンガポールで開催された、高齢者ケアをテーマに据えた国際アワード「Elderly Care Innovation Award」。このアワードで掛川東病院が注力する地域のつながりをつくり、お互いを支え合う取り組みが病院部門で優秀賞、総合部門で特別賞を受賞しました。およそ6年間にわたりこの活動を積極的に主導してきたのが、院長を務める宮地紘樹さんです。

 

「これから地域の病院が持続可能な形で存続するためには、治療を中心とした従来の役割を果たすだけではなく、地域住民の健康づくり、働くスタッフの人づくり、そして地域との協働によるまちづくり、この3つの取り組みが不可欠だと考えています。就任当初は、これらの活動の意義を理解してもらうことに苦心していた時期もありました。しかし地域との協働が進むにつれ、また今年は世界的なアワードを受賞したことを機に、私たちの取り組みに対する理解が広がっていると感じています。」

 

2013年頃から医師として訪問診療に取り組んできた宮地さんは、以前からソーシャルキャピタル(社会関係資本)を活用した地域医療システムの構築を模索してきたといいます。掛川東病院に着任して以降は、地域住民の生活を総合的に支える「コミュニティ・ホスピタル」としての役割を果たすべく、行政や民間企業とも連携して数多くのプロジェクトを立ち上げ、運営しています。

宮地 紘樹(みやち ひろき) 掛川東病院 院長医師 血管外科医/家庭医
宮地 紘樹(みやち ひろき) 掛川東病院 院長医師 血管外科医/家庭医

地域の多職種連携を促す勉強会「さてつ」は、すでに70回以上の開催実績があり、毎回70名ほどの医療関係者が集まります。医療従事者と住民が交流する場「ざつだん」では、病院前にキッチンカーを呼んだり、認知症カフェを開いたりと、工夫を重ねています。また、行政や企業と協働するプロジェクト「たわわ」では、医師が同乗した移動スーパーを運行し気軽に医療に関する相談ができる場づくりや、地域住民同士のつながりをつくる持ち寄りパーティーの開催などを実施。他にも地域全体を巻き込んだマルシェを主催したり、DJチームを呼び病院内でクラブを開くなど、手がけるプロジェクトは非常にユニークかつ多岐にわたっています。
 

「医療機関としての敷居を取り払い、どんな業種の方とも一緒に活動を行います、という姿勢を示して門戸を開いたことで、医療関係者以外の方からもたくさん声をかけていただけるようになりました」
 

地域住民向けに実施した2024年のアンケートでは、約96%の方が「活動を応援する」と回答。病院で働くスタッフの意識も徐々に変化が見られ、離職率も減少傾向にあるそうです。

地域活動に求められる挑戦と失敗のマインドセット

順調に見える同院の活動ですが、課題もあります。そのひとつが、医療・介護従事者のスキル・マインドセットに関するものです。

 

「医療の世界では失敗が許されないため、定められたマニュアルやガイドライン等によって業務の質が担保されます。しかし地域活動では、挑戦と失敗を繰り返しながら最適なものを見つけていくアプローチが求められます。そのため従来の医療者の仕事に対する考え方をアップデートするような人材育成が必要だと思っています 。」

 

宮地さん曰く、今はまだまだ発展途上。スタッフの多くが注力する従来の医療サービスの質を保ちながら、どうすれば地域全体のウェルビーイング向上につなぐことができるかを模索しているという。最近は、病院内に地域つながり推進委員会を立ち上げ、職員の人材育成など長期的な課題にも取り組みながら、より良いコミュニティ・ホスピタルの姿を模索しているといいます。
 

「最終的には、社会保障に頼らなくても住民のみなさんの健康が守られ、スタッフは働きがいを持って働けて、みんなが自分らしい生活を送れる地域にしていきたいと考えています」さらなる発展に向け、地域の仲間との掛川東病院のチャレンジは続きます。
 

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