医師
NRHA・NRHA会員の取り組み

国際診療で旅先の不安を安心へ

日本への旅行需要が高まる今、2024年の訪日外国人旅行者の数はのべ3,680万人を超え、過去最高を記録※。それに比例して訪日時の医療ニーズも増えています。しかし受け入れ先となる医療機関は乏しく、軽症でも救急車に 頼る例が絶えません。この状況を変えるべく、CUCは全国の主要観光都市の医療機関と連携し、国際診療体制の構築を推進しています。2023年7月に新宿から始まった取り組みは2025年4月には全国7拠点へ広がり、国際診療の新しい体制づくりが進んでいます。 ※ 日本政府観光局「訪日外客数」2024年12月および年間推計値 CUC 国際診療事業部/医療法人愛厚会 那覇NICE救急クリニック (沖縄県那覇市)

国際診療で旅先の不安を安心へ

需要急増に応え、1年9カ月で全国7拠点に拡大

「2030年までに訪日外国人旅行客6,000万人」という日本政府の目標は順調に推移しており、2025年の上半期の時点ですでに訪日外国人数は2,000万人を超えています。日本各地の観光地は世界中からの旅行者でにぎわっています。観光庁によると、滞在中に医療機関を受診するケースは約1~2%。一方で、訪日中に医療を必要とする海外の方々の受け入れ実績がある国内の医療機関は約半数にとどまっています※3。

※3 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査 結果報告書70P
 

 元東京消防庁の救急救命士であり現・CUC 国際診療事業部リーダーの加藤太紀さんは、消防庁勤務時代から訪日外国人を取り巻く医療課題を目の当たりにしてきました。

「言語や文化の違い、未収金リスクへの不安から受け入れをためらう医療機関も少なくありません。そのためホテルなど観光業に携わる方々が訪日外国人でケガや病気のある方の受け入れ先を探してもなかなか決まらない。その結果、軽症の訪日外国人に対し、本来必要のない救急車の出動が繰り返され、真に救急車を必要とする重症の方に医療が届かない恐れがあります。旅行先やビジネスなどで日本滞在中に傷病を負った際も、訪日外国人の方々が安心して受診できる一次救急の仕組みが必要だと考えました。」

 加藤さんの危機感は多くの医療現場の問題意識と重なり、2023年7月に東京・春山記念病院の医師とともに国際診療をゼロから立ち上げスタートしました。急 増 す るインバウンド受診者の需要に応える形で、本事業は観光地を中心に急速に拡大。2024年8月に京都、9月に日本橋、10月に小田原、12月に札幌、そして2025年4月には大阪と那覇へ。わずか1年9か月余りで全国7拠点の体制へと広がり、2024年度の累計患者数は1,578名にのぼりました。

岡本 昌子(おかもとしょうこ) 那覇NICE救急クリニック 院長医師
岡本 昌子(おかもとしょうこ) 那覇NICE救急クリニック 院長医師

言葉と文化の壁を越え拠点をつないで患者様に伴走

急拡大する国際診療体制の裏では、医療現場の負担も増していました。文化や習慣が異なる海外の患者様のニーズに応えるのは容易ではなく、自由診療という性質上、日本の通常診療では想定しない要望も寄せられます。那覇NICE救急クリニックの院長として国際診療を行う岡本昌子さんは語ります。

「毎日のように対応したことのないことと向き合います。たとえば国内では珍しい狂犬病や腸チフスのワクチン接種、マラリア検査の依頼。さらに、より専門的な治療が必要な方に向けた他院の紹介、診断後の薬の説明など、診察室の外での支援も欠かせません。」

  

こうした現場を支えているのが「医療コンシェルジュ」です。医療知識を備え、他言語で診察前の電話問合せから受付、診療中の通訳、検査、薬の交付、会計までのワンストップサービスに加え、診療後に帰国するまでのアフターフォローまで『医療の伴走者』として対応します。この仕組みは国際診療事業部が新設し、各病院・クリニックの国際診療の支援体制として整えました。

医療コンシェルジュとして活躍する熊小杭さんは、自身の仕事についてこう語ります。

「言語や文化の壁を超えて患者様と医療をつなぐ橋渡し役です。診察時に初めて聞く病名や処置については医師に確認し、患者様に分かりやすく伝えます。不安そうに来院された患者様に笑顔が戻った時、この仕事のやりがいを感 じ ま す 。」

加藤 太紀(かとうたいき) 株式会社シーユーシー国際診療事業部リーダー
加藤 太紀(かとうたいき) 株式会社シーユーシー国際診療事業部リーダー

また、国際診療の現場を支えるもうひとつの柱が、各地の医療機関同士の連携です。たとえば、月1回の医局会やコンシェルジュ会をはじめ、他拠点間をつなぐオンライン会議やチャットで密な情報連携を行っています。また専門医の知見をシェアする仕組みをつくり、それぞれの拠点で異なる繁忙期に拠点同士で応援を送り合うことで、チームとして困難を乗り越えてきました。

  

全国に拠点があるからこそ、医師やコンシェルジュが互いに助け合うネットワークができ、ひとつの拠点では対応しきれない課題も解決できるようになったといいます。

 

国際診療事業部リーダーの加藤さんは、今後の展望をこう結びます。「訪日外国人の方々が日本のどこにいても安心して医療にアクセスできる体制を整えたい。その結果、地域の医療体制におけるボトルネックの解決の一助となるはずです。また、将来的にはこの仕組みを海外にも広げ、世界中の旅路を安心で満たすインフラを目指します。」

彼らの挑戦が、日本発の国際診療モデルを世界へ押し広げていきます。

熊 小杭(ゆうしょうこう) 株式会社シーユーシー国際診療事業部医療コンシェルジュ
熊 小杭(ゆうしょうこう) 株式会社シーユーシー国際診療事業部医療コンシェルジュ