コメディカル
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介護現場のDXで寄り添う時間を取り戻す

2040年に介護職は約57万人不足すると推計され※、深刻化する人材不足と現場負担を軽減する切り札としてDXが注目されています。2024年10月開設の介護付き有料老人ホーム「あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘」(以下あむらいふ)は、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」モデルを採用。定期的な訪問業務にICTやデジタルツールを活用し、業務負担を軽減しながらケアの質向上も図っています。現場が推進するあむらいふのDXに迫ります。 ※厚労省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 医療法人 白楊会 あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘(愛知県名古屋市 )

介護現場のDXで寄り添う時間を取り戻す

AI音声認識カルテで記録時間を1/7に短縮

バイタルセンサー付き見守りカメラ、AI音声認識による電子カルテ、自律走行型アバターロボット、各フロアに配置されたペットロボット。あむらいふでは、2024年10月の開設以降、さまざまなICTシステムや機器を導入し、介護現場のDXを進めています。

 

「増加する高齢者と介護ニーズの拡大、それに伴う介護職員の不足は、年々深刻さを増しています。その解決の糸口として、私たちはDXを積極的に推進してきました」そう話すのはあむらいふ運営支援部部長の志賀紀昭さん。2023年夏頃から、あむらいふ開設に向けて、運用体制の構築から使用機器の選定、スタッフ研修の計画まで携わってきたといいます。

 

「あむらいふは元々介護老人保健施設として運営していました。開設前にスタッフ全員と面談した際、『利用者様の生活にもっと寄り添いたい』という介護スタッフの声をたくさん聞きました。けれど現実には、計画や記録に追われ、その時間が持てない。DXで業務負担が減れば、“寄り添う時間”を取り戻せるはずと考えました」

  

数あるDXの中でも、とくにインパクトがあったのがAI音声認識機能を搭載した電子カルテです。スタッフが利用者様の訪問計画を終えた後、専用マイクで入浴・食事・排泄などの様子を話すと、内容がリアルタイムでスマートフォンアプリ内のカルテに記録されます。2025年4月の本格導入後、1件あたりのカルテ入力時間は平均4分28秒から36秒に短縮され、記録量は利用者様おひとりあたり4倍以上に増えました。これにより、これまで書ききれなかった細かな記録が残せるようになり、スタッフ間の情報共有がより正確かつ迅速になっています。

志賀 紀昭(しがのりあき) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘運営支援部 部長
志賀 紀昭(しがのりあき) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘運営支援部 部長

定期巡回オペレーターとして日々このカルテを使う柴田愛美さんはこう話します。「以前は一度事務所に戻って端末を開き、入力する時間が必要でしたが、今はケアが終わったその場で記録できます。このシステムなしでは介護に入ることは考えられません」

 

もう一つの大きな変化が、ベッドセンサーと連動した見守りカメラの導入です。24時間全室にカメラを稼働することで、月233時間の業務削減につながったといいます。柴田さんは語ります。「夜間から早朝にかけてカメラで居室内の様子を遠隔で見守ることができるので、必要以上の巡回を省けます。バイタルの低下をいち早く察知し、心肺蘇生につながった事例もありました」

柴田 愛美(しばたまなみ) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘定期巡回オペレーター
柴田 愛美(しばたまなみ) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘定期巡回オペレーター

抵抗感を乗り越えた“現場発“の浸透策

しかし、DXの推進はすべて順調に進んだわけではありませんでした。DX推進リーダーの立松久雄さんはこう振り返ります。

 

「『見守りを機械任せにしてよいのか』、『音声入力は難しそう』といった懐疑的な声も少なくありませんでした。しかし、最初は戸惑いを感じていた方々も便利さを実感すれば自然と使うようになります。そこで簡単に読める画像付きマニュアルを作って活用してもらったり、リーダー層が率先して使ったりすることで操作へのハードルを下げ、地道に浸透させていきました」

結果、数字以外の効果も表れています。見守りカメラの導入で巡視回数が減ったことで、夜勤スタッフが緊急対応やケアに集中できるようになり、利用者様との会話や細やかなケアにあてる時間が増えました。リーダーの志賀さんは、このDXの先に描く未来をこう語ります。

「ICTやロボットの導入はあくまでDXの“手段”です。最終的な目的は『利用者様が安心して自分らしく暮らせるように』というあむらいふが大切にしている考えを実現すること。DXによって生まれた時間を、笑顔や安心につながる関わりに使っていきたいです」
 

あむらいふでは今後もDXを積極的に推進していく方針です。現場の負担を減らし、利用者様一人ひとりに向き合う時間を 増 や し 、安 心 で きる 暮 らしを 支 え る 。介 護 の 質 とス タッフの働きやすさ、その両方を追求する挑戦は、これからも続 き ま す 。

立松 久雄(たてまつひさお) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘DX推進リーダー
立松 久雄(たてまつひさお) あむらいふ虹が丘フィールド・ノア地域巡回センター虹ヶ丘DX推進リーダー